松本白鸚(まつもと・はくおう)
二代目 高麗屋
初世松本白鸚の長男。昭和21年に二代目松本金太郎を名のり初舞台、昭和24年に六代目市川染五郎を襲名し、昭和56年に九代目幸四郎を襲名。平成30年1月、2月に歌舞伎座で息子、孫と共に高麗屋三代襲名披露を行い、二代目白鸚を襲名。立役として時代物、世話物、新歌舞伎、舞踊など幅広い分野で数々の当り役を持つ。中でも『勧進帳』の弁慶は屈指の当り役のひとつで、平成22年8月には52年かけて全国47都道府県で上演するという偉業を達成。1000回公演は東大寺大仏殿前にて奉納上演。上演回数は1100回以上、今なお更新し続けている。この他にも時代物では『仮名手本忠臣蔵』の大星由良之助、『菅原伝授手習鑑』の松王丸。所作事では『積恋雪関扉』の関兵衛、『素襖落』の太郎冠者。近年は『魚屋宗五郎』の宗五郎、『盲長屋梅加賀鳶』の道玄、『筆屋幸兵衛』の幸兵衛といった世話物も数多く手がけ、独自の境地を示している。と同時に、長年、ミュージカルの舞台でも活躍し、『ラ・マンチャの男』では主演を半世紀にわたり演じ続けている。
平成17年紫綬褒章、平成21年日本藝術院会員。文化功労者。
松本幸四郎(まつもと・こうしろう)
十代目 高麗屋
二代目松本白鸚の長男。昭和54年に三代目松本金太郎を名のり初舞台、昭和56年に七代目市川染五郎を襲名。平成30年に高麗屋三代襲名として、父の前名の幸四郎を十代目として襲名。清新な美貌とすらりとした風姿が生きる古典の二枚目や女方はもとより、演じる役柄は幅広い。殊に近年は『仮名手本忠臣蔵』の大星由良之助、『熊谷陣屋』の熊谷直実、襲名披露では『勧進帳』の弁慶など父祖の当り役にも挑み、成果を挙げている。また『女殺油地獄』の河内屋与兵衛や『恋飛脚大和往来』の忠兵衛など上方歌舞伎や和事にも積極的に取り組んでいる。さらには『江戸宵闇妖鉤爪』『陰陽師』など新作歌舞伎の上演にも情熱を注ぎ、評価を得ている。外部出演した劇団☆新感線の『アテルイ』から歌舞伎NEXT『阿弖流為』へと進化させたり、フィギュアスケートと融合させた『氷艶―破沙羅―』など、歌舞伎の新しい世界を切り拓き、次代の歌舞伎の担い手として大きな期待が寄せられている。
市川高麗蔵(いちかわ・こまぞう)
十一代目 高麗屋
日本舞踊家の二世花柳泰輔の長男。大伯父は八世市川中車。昭和37年に初舞台の後、昭和46年に初世松本白鸚の部屋子となり、市川百々丸を名のる。昭和56年に二代目市川新車を襲名後、平成6年に高麗蔵を十一代目として襲名。若い時から時代物の赤姫や娘役などの女方で本領を発揮するが、目鼻立ちがしっかりとしているので、若衆の二枚目もよく似合う。公文協の中央コース『菅原伝授手習鑑 加茂堤』では、初役の八重を演じ、過去には、斎世親王、苅屋姫を演じるなど幅広く活躍している。高麗屋のベテラン門人のひとり。
大谷廣太郎(おおたに・ひろたろう)
三代目 明石屋
大谷友右衛門の長男。平成8年に初お目見得の後、平成15年に三代目廣太郎を襲名して初舞台。温和で飄逸な雰囲気が魅力で、歌舞伎座恒例の納涼歌舞伎の『弥次喜多』での旅館の亭主では持ち味を生かした役作りとなった。『盟三五大切』の虎蔵をはじめ世話物の鳶や男伊達に爽やかさがある。幸四郎が『勧進帳』の弁慶を初役で勤めた時以来、後見を任されるほどで幸四郎からの信頼も厚い。高麗屋の家とは親戚ということもあり、襲名には欠かせない花形の立役。
松本錦吾(まつもと・きんご)
三代目 高麗屋
二世松本錦吾の長男。昭和24年に初舞台の後、昭和28年に初世松本白鸚の内弟子となり松本錦彌を名のる。その後、昭和40年に三代目錦吾を襲名。同じく高麗屋の門弟の父は、女方として活躍したが、当代は時代物、世話物でも滋味のある立役を勤める。『仮名手本忠臣蔵 七段目』の九太夫や『籠釣瓶』の権八などでは欲深さを見せる一方で、『魚屋宗五郎』の父太兵衛では市井の人の悲しみや優しさを味わい深く演じる。長年、高麗屋一門を支える重鎮である。
市川猿之助(いちかわ・えんのすけ)
四代目 澤瀉屋
市川段四郎の長男。伯父は市川猿翁。昭和58年歌舞伎座『御目見得太功記』の禿たよりで二代目市川亀治郎を名乗り初舞台。平成24年6・7月新橋演舞場『義経千本桜 川連法眼館の場』『ヤマトタケル』で四代目市川猿之助を襲名。古典を継承する力と新作を創造する力を併せ持ち、26年には伯父の意思を引き継ぎスーパー歌舞伎Ⅱ第一作『空ヲ刻ム者』をロングラン上演、翌年には第二作として『ワンピース』を上演し、初演動員数20万人を記録する大成功をおさめた。活動の場は歌舞伎だけでなく、三谷幸喜作・演出『エノケソ一代記』、井上ひさし作・栗山民也演出『雨』、前川知大作・演出『狭き門より入れ』をはじめ、映画「ザ・マジックアワー」「天地明察」、NHK大河ドラマ「龍馬伝」など、数多くの作品に出演している。