江戸川ジャズナイト2015
セットリスト
【第1部】
◆HIBI★Chazz-K
M-1 ひょこりひょうたん島
M-2 軍隊行進曲
M-3 Donna Lee (w/佐藤達哉)
M-4 Spain (w/佐藤達哉)
M-5 Happy (w/佐藤達哉)
◆市原ひかり=纐纈歩美 スタンダード・クインテット
M-1 枯葉
M-2 This I Dig of You
M-3 Stardust
M-4 My Funny Valentine
【第2部】
◆Fried Pride
M-1 Eat the Rich
M-2 Close to You
M-3 Take 5
M-4 Almaz
M-5 Rose
M-6 Dig it
【第3部】
◆前田憲男トリオ スペシャルゲスト 渡辺真知子
M-1 Misty
M-2 Yesterdays
M-3 Cute
M-4 迷い道 (w/渡辺真知子)
M-5 Stardust (w/渡辺真知子)
M-6 ブルー (w/渡辺真知子)
M-7 Smile (w/渡辺真知子)
M-8 かもめが翔んだ日 (w/渡辺真知子)
M-9 Here's to Life (w/渡辺真知子)
◆ジャムセッション
M-1 Take the "A" Train
M-2 Isn't She Lovely (feat. Shiho)
M-3 Amazing Grace (feat. 渡辺真知子)
2015.10.03(sat)
江戸川区総合文化センター 大ホール
10月3日(土)に開催される「江戸川ジャズナイト2015」の関連企画としまして、8月22日(土)、江戸川区立東葛西中学校にて【ジャズ・ポップス勉強会】と題したクリニック(注)が開催されました。
クリニックを受講したのは、東葛西中学校の吹奏楽部「East’on Pop Band」。1年生から3年生まで約60名が参加してくれました。普段は吹奏楽の楽曲を演奏することが多いのですが、定期演奏会などではポップスステージもあるそうで、なかでも“ジャズ”の楽曲は部員にも人気もあるようです。「“ジャズ”をカッコよく演奏したい!」という吹奏楽部員のみなさんの悩みに応えるべく、今回のクリニックが実現しました。
指導してくださったのは、ストリート・ジャズ・サックス・アンサンブルバンド「HIBI★Chazz-K」のリーダー、ひび則彦さん(ソプラノサックス)。そして、同じく「HIBI★Chazz-K」のメンバー、染谷真衣さん(アルトサックス)と小仲井紀彦さん(バリトンサックス)という豪華3名の先生方。
江戸川区内のスタジオを拠点に活動しているご縁から、今回の「江戸川ジャズナイト2015」に出演していただくこととなり、このクリニックの講師も務めていただくこととなりました。
まずはご挨拶代わりに3人でのパフォーマンス。今回のクリニックの課題曲でもある「Sing, Sing, Sing」と「In the Mood」を演奏しながら入場。普段のHIBI★Chazz-Kとは少し違う特別アレンジを披露して、部員たちも手拍子で迎えました。
そして本題のクリニックに突入。ひび先生からの的確なアドバイスを聞き逃すまいとメモをとりながら熱心に聞き入る部員たちの姿が印象的でした。
その前向きな姿勢はすぐに成果となって表れ、アドバイスを受けて演奏を繰り返すごとに上達していくのが手に取るように感じられました。音の大きさ、音色、表現力や表情などが、最初の演奏とは見違えるようで、これには顧問の先生も驚かれていました。
クリニックの中でひび先生から、「イメージすることの大切さ」が繰り返し教えられました。それは、自分の好きなプレイヤーの音でも、好きな曲でも、あの人のあの音を出したいと思って楽器を演奏することが上達への近道になる、ということでした。最初はマネで構わない。イメージしてマネすることが大切だそうです。
そういった意味では、ひび先生をはじめ、プロの生音を目の前で聞けた部員たちは貴重な体験ができたのではないでしょうか。
夏休み中でも毎日のように、朝から夕方まで練習している部員たちにとっては、4時間という長時間にわたるクリニックもへっちゃらな様子で、最後まで元気いっぱいに演奏してくれました。それに応えるように、ひび先生も模範演奏を交えながら熱い指導してくださいました。
ウワサを聞きつけた他の中学校の音楽の先生や吹奏楽部の顧問の先生、ご父兄の方々も駆けつけてこられて、こちらも熱心に最後まで見学をされていました。
クリニック終了後も帰りかけるひび先生たちを捕まえて、練習方法や楽器などについて質問攻めにするなど、最後まで積極的な姿勢は変わることなく、本当に関心させられっぱなしの一日でした。
「見る見るうちに上手くなって本当に驚きました」と小仲井先生。ひび先生は「僕も吹奏楽でサックスと出会いました。僕たちもがんばって続けていきますので、ぜひみなさんも楽器を演奏することを続けていってください。また会いましょう!」とメッセージを贈ってくださいました。
なお、今回のクリニックに参加してくれた東葛西中学校の吹奏楽部員は全員、10月3日(土)江戸川区総合文化センターで開催される「江戸川ジャズナイト2015」に招待されます。今回指導してくださったひび先生の「HIBI★Chazz-K」のほか、日本のトッププレイヤーの迫力ある演奏を体感することができるチャンスに、部員たちも楽しみにしてくれていることでしょう。
最後に、楽しみながらも中身の濃い指導をしてくださった「HIBI★Chazz-K」のひび則彦先生、染谷真衣先生、小仲井則彦先生、東葛西中学校の戸張先生、ご協力くださったみなさま、本当にどうもありがとうございました!
そして東葛西中吹奏楽部のみなさん、これからもみんなで楽しく“ジャズ”を演奏してくださいね!!
(注)クリニック ・・・ プロミュージシャンなどがアマチュアバンドやプレイヤーなどを指導すること
写真提供:BIGBAND!編集部
前田憲男さん
NORIO MAEDA
Composer, Arranger, Pianist
毎日が自然体。
日本のジャズジャイアンツは
今日もピアノに向かう。
ジャズピアニストとして、また作・編曲家として半世紀以上にわたり、幅広く日本の音楽シーンをリードしてきた前田憲男さん。今回その音楽家としてのヒストリー、そして80歳を超えた今も第一線で活躍を続けるパワーの秘密をうかがいました。
前田憲男
作編曲家/ピアニスト 1934年大阪生まれ。独学でピアノを習得し、高校卒業後プロ入り。ピアニストとして高く評価されるとともに、アレンジャーとして幅広い分野で活動。1975年からテレビ番組『11PM』へのレギュラー出演で好評を博し、同じく『ミュージック・フェア』などの音楽監督を担当。1980年に「ウィンドブレイカーズ」を結成、今年で36年目を迎える。自己のトリオやスペシャルビッグバンドおよび全国主要オーケストラの客演指揮など、多彩な演奏活動を展開。1983年「南里文雄賞」、レコード大賞「最優秀編曲賞」、2014年「文化庁長官表彰」を受賞。
--- 「江戸川ジャズナイト2015」にご出演いただくトリオは、前田さんのほか加藤真一さん(ベース)、山田 玲さん(ドラムス)ですが、ドラムの山田さんは弱冠23歳とうかがっています。またスペシャルゲストには渡辺真知子さんが登場するという賑やかなステージ、みなさんとはよく共演されているのでしょうか。
前田憲男さん(以下、前田) このトリオはここ2~3年、一緒にやっています。定期的に演奏しているレギュラーバンドはほかにも「We3」(ウィスリー)や「ウインドブレーカーズ」などありますが、共演する人が変わると出てくるリズムがまったく違うので、その上に乗ってピアノを弾くのはとても新鮮です。渡辺真知子さんとは彼女が出演したテレビ番組『ミュージックフェア』のアレンジを担当したのがきっかけで、デビュー以来のおつきあいということになります。
--- 息の合った楽しいステージになりそうですね。ライブハウスで演奏される場合と、今回のような大きなホールに出演される場合とでは、違いはあるものでしょうか。
前田 ないない。どこで演奏してもやってることはいつも同じですから。人間そんなに器用に変えられるもんじゃないよ(笑)。
--- ステージで緊張されることはないのですか。
前田 それもほとんどないけど……。あ、一度だけあった! 東京厚生年金会館で東京交響楽団と一緒にリサイタルをやった時。自分が初めて書いたオーケストラ譜だったのでステージで挨拶していたら、後ろでドラムの猪俣猛が「あがってるあがってる」なんてからかうものだから、ホントに緊張してきた(笑)。でもその時一回だけでしたね。
編曲家として、プレイヤーとして音楽活動を続ける
--- 教師のお父上から読譜とピアノを習い、軽音楽部でコードを学んだとのことですが、独学でプロとしてステージに立ち、またどにようなきっかけで編曲を始められるようになったのでしょうか。
前田 当時はなにしろ音楽ができる人材が少なかった。高校を出てすぐ、スカウトされ伊丹空港周辺の米軍キャンプでピアノを弾くようになりました。そのときに「この曲をやりたいから譜面をつくってくれ」と頼まれ、レコードを耳コピーして三管の譜面を書くようになった。また当時入手できた海外の譜面を見て、書き方も少しづつ覚えていきました。
‘55年に上京し、運のいいことに一ヶ月もたたないうちに、赤坂見附のナイトクラブ『ラテンクォーター』に出演しているバンドのピアニストになることができました。また当時は次々とテレビ局が開局しフルバンド全盛の時代です。とにかく書く仕事が舞い込み、短期間で鍛えられてあっという間にビッグバンド譜まで書けるようになりました。僕自身もちょうど子どもが生まれて生活を安定させたいと思っていた時期です。徹夜でピアノを弾くのは無理だけど、編曲だったらできるかなと(笑)。それでだんだんアレンジの仕事が中心になっていき、収入もホントに10倍になった。
--- 80年になるとご自身の「前田憲男ウインドブレーカーズ」を結成、以後今日まで35年間続いています。またピアノトリオ「We3」(猪俣猛:ドラムス、荒川康男:ベース)、羽田健太郎さんが亡くなるまで続いた「トリプルピアノ」など、編曲のお仕事と平行してプレイヤーとしても現役でご活躍されてることは驚異的だと思うのですが……。
前田 「ウインドブレーカーズ」のメンバーは途中で替わりましたが、どのバンドもたまたま自然に続いた、ということでしょうか。アレンジばっかりやっていると蓄積されたものが出て行くばかりで次の新しいことが入ってこないと感じることがある。実際、アレンジャーに転向して5~6年たった頃まったく書けなくなった時期がありました。これはまずい、と思ってライブを再開したことが「We3」が誕生するきっかけです。すると書けなかった病気も自然にだんだん治っていた。
--- 演奏することが常になにか新しいアイデアをもたらす、と?
前田 そういうことでしょうねえ。アレンジの仕事は好むと好まざるにかかわらず、情報として常に世の中の音楽をなんでも頭に入れておくことが必要です。サザンもエグザイルも聴いていますよ。違う世代がどんな音楽を好むのか、漠然と知っていないと。だからといって興味のないことを書いてもしかたがないんですけどね。演奏するほうは好きなように弾けばいいから、そこは違うな。
--- 前田さんはジャズ以外の音楽においても数え切れないほどのお仕事をされてきましたが、ご自身にとってジャズとはどのような存在でしょうか。
前田 僕が初めて自分のお金でレコードを買ったのはベニー・グッドマン(クラリネット)の「アレキサンダース・ラグタイムバンド」が入ったアルバム。それまで聴いていたクラシックやタンゴ、ハワイアン、カントリー、などとは全く“別のサウンド”としかいいようのない心地よさだった。それがいいと思ったからこそこの世界に入ってきた。だから自分のベースはジャズだといえるでしょう。ただ何をもってジャズというのかは人それぞれ。僕がいうジャズとはグッドマンであり、ジーン・クルーパ(ドラムス)であり、オスカー・ピーターソン(ピアノ)やジョージ・シアリング(ピアノ)だった。チャーリー・パーカー(サックス)以降をジャズだと思っている若い世代とは相当違うでしょう。でもそれでいいんじゃないかな。音楽に対する感じ方は一人ひとり違うのだから。
ジャズの巨匠は漫画とパソコンが得意!!
--- 音楽でも音楽以外のことでも、これからやってみたいことはなにかおありですか。
前田 絵を描くことかな。実は学生時代は音楽よりも漫画家になりたかった。高校を卒業し、まだ大阪にいた頃に地方紙の4コマ漫画を半年間描いていたことがあります。
国会図書館に行けば残っているはず。ただね、それを見たら一目瞭然。漫画家にならなくてよかった!(笑)
--- 日本のジャズファンはきっともっとそう思いますよ。前田さんの音楽を聴けなかったかもしれませんから。それにしても新聞連載とは驚きですね。
前田 ホームページにある僕の似顔絵の漫画も自分で描いて、しかも顔をクリックすると動くようになっている(笑)。ホームページ自体も自分でつくりました。アニメももっと増やして載せる予定だったのですが、さすがに研究して書き換える時間が取れない。それが残念。
--- 現在は譜面はすべてパソコンでお書きになっているとのこと。パソコンが得意なのですね。
前田 パソコンを使い始めたのはミュージシャン仲間のあいだでは早いほうだった思います。Macとフィナーレ(楽譜作成ソフト)に落ち着くまで、出まわり始めた新しいソフトをあれこれ使っていましたからもう20年近く経つんじゃないかな。1曲仕上げるだけなら手で書いた方が今でも早いんだけど、保存や書き換えなどはやはり便利ですから。
--- 新聞のインタビューで「100歳の誕生日コンサートをやる」とおっしゃっていました。
前田 昔から90歳の誕生日コンサートをやるって、周りに言っていたんです。そしたらなんだか現実的になってきたし(笑)ハンパだから100歳ってことにした。先すぎてどこの会場もまだ予約を受け付けてくれないんですけどね。
--- 江戸川区総合文化センター 大ホールなら大丈夫では?
前田 それはありがたいね!(笑)
取材協力:BIGBAND! 編集部