江戸川区総合文化センター

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【インタビュー】ピアノ 石田啓明さん 第3回 音楽と真摯に向き合うために

12月5日(土)に開催する「フレッシュ名曲コンサート」に、ピアノで出演される石田啓明さんへのロングインタビュー。
最終回は、ベルリンでの留学生活や、音楽以外の話などを伺っています。

音楽と真摯に向き合うために

--今年はベルリンに留学されるそうですね。
石田啓明さん(以下、石田)  はい。8月末から向こうに住みます(取材は8月上旬)。その準備のために、6月にも2週間くらいベルリンに行っていたのですが、そのうち半分くらいは演奏会を聴きまくっていました。ベルリンにはベルリン・フィル以外にもベルリン交響楽団、シュターツカペレ・ベルリン(ベルリン国立歌劇場管弦楽団)、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団、ベルリン・コーミッシェ・オーパーにもオケがありますし、本当に数えきれないくらいオーケストラがあります。そしてどれもハイクオリティで素晴らしい。例えば、ベルリン・フィルの団員がコーミッシェ・オーパーにコンチェルトのソリストとして出演していたりしますし、オーケストラ=ソリストの集まりなんだなと思いました。

--世界の頂点で活躍する人たちが集まっているところなので、数も多ければレベルも高いということですね。しかしチケットは安いと聞きますが?
石田  そうですね。サイモン・ラトル指揮のベルリン・フィルで、ピアノがクリスティアン・ツィメルマン、それを11ユーロ(約1,500円)で聴けました。立ち見だったので3時間くらい前から並びましたが、東京でベルリン・フィルを聴くと3万円とかしますからね。オペラも観ましたが、学生券が15ユーロ(約2,000円)くらい。日本の学生証を出したら怒られましたけど、それでも売ってくれました(笑)。ベルリンは国立大学の学費が無料など、学生にはとても優しくて住みやすい街だと思います。

--音楽以外の話も伺いたいのですが、趣味などはありますか。
石田  僕はバドミントンが大好きで、去年霧島音楽祭に行ったとき、近くに体育館があって、なんと1時間40円で借りられたんです。そこで毎日バドミントンをやっていて、なんだかバドミントンの強化合宿みたいになってました(笑)。体を動かすのはストレス発散にもなって楽しいので、とても好きです。
あと映画も大好きです。もちろん観ることが目的なのですが、映画館で周りの目を気にせずに一人でポップコーンを食べながら映画を見るのがすごく好きで、お気に入りはキャラメルポップコーンです。前から計画してと言うよりも、思いついた時に、1時間後に何やってるかな?みたいな感じでふらっと立ち寄る感じです。最近では『ジュラシック・ワールド』を見ました。


--最後に、コンサートの聴きどころやお客様へのメッセージをお願いします。
石田  チャイコフスキーのピアノ協奏曲は、力強くダイナミックに鳴らす部分と、抒情的に美しく歌い上げる部分とが絶妙なバランスで散りばめられていて、ピアノという楽器の可能性を最大限に引き出すことのできる曲だと思います。力強いホルンに導かれて始まる、冒頭のメロディがあまりにも有名ですが、他にも聴きどころが沢山あります。今回、なんとなくでもいいのでちょっと注目して頂きたいのが、第1楽章の前半部分。クラリネットとピアノで奏でる第2主題が、穏やかに始まり、次第に発展していきます。オーケストラと一体となって音楽を紡ぎ上げ、共に盛り上がっていく…弾いていて、僕が最も幸せを感じる部分です。そしてなんといっても、小林先生と日本フィルさんとの共演ですから、他では聴けない、熱く濃密なチャイコフスキーになる予感がしています。寒い時期ではありますが、きっと会場は熱気に包まれると思いますので、ぜひ江戸川区総合文化センターに演奏を聴きに来てください。

プライベートなお話では、若者らしい素直さや明るさも見せてくれた石田さんですが、何と言っても、ピアノ、そして音楽に対する“愛情”が感じられるインタビューとなりました。
現在は既にベルリンへ留学中で、12月5日の本番に照準を合わせ帰国予定とのこと。ベルリンでの留学生活で学んだことを、今回の公演でどのように魅せてくれるのか、ますます本番が楽しみです。

<おわり>

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【インタビュー】ピアノ 石田啓明さん 第2回 ピアノに対する気持ちの変化が生まれた

12月5日(土)に開催する「フレッシュ名曲コンサート」に、ピアノで出演される石田啓明さんへのロングインタビュー。
今回は、ピアノを始めた頃のお話を中心に伺っています。

ピアノに対する気持ちの変化が生まれた

--ピアニストを目指すことになった原点について、いくつかお聞かせいただければと思います。まず、ピアノを始めたきっかけを教えてください。
石田啓明さん(以下、石田)  兄と姉がいるのですが、二人とも6歳になったときからピアノとヴァイオリンを始めていたので、その流れで僕も6歳のときに本格的にピアノのレッスンを受け始めました。車の中でもいつも流れていたのはクラシックでしたし、環境が自然とピアノに向かわせたように思います。

--ヴァイオリンという選択肢はなかったのですか。
石田  姉のヴァイオリンのレッスンについて行って、「弾いてみる?」と言われたことがあったのですが、楽器を構えるあの格好がそのときは恥ずかしくて、いやだと言ったみたいです(笑)。

--6歳から本格的にピアノを始められて、いかがでしたか。
石田  日本独特のものみたいですけど、ピアノは女の子が弾くものだというイメージがあって、その頃はやっていることが恥ずかしくて周りには言えなかったです。でも、今は変わってきていますよね。むしろピアノを弾ける男の子はモテるという話も聞きますし(笑)。

--今までピアノを続けてこられて、苦労はもちろんおありだと思いますが、楽しいこともありましたか。
石田  小学生の頃は練習はあまり好きではなかったのですが、本番は楽しかった記憶があります。中学生までは毎年音楽教室での成績が優秀だと、公開試験という形でホールで演奏できることになっていて、それがすごく楽しかったことを覚えています。ところが、小学校6年生のとき初めてコンクールを受けたら予選で落ちてしまいました。結構自信満々で弾いていたので、「あれ?」という感じで、結構ショックで。それまでは遊びの延長のような感覚で弾いていたのが、厳しい世界を垣間見たことでピアノに対する気持ちに変化が生まれ、真面目に練習して細かいところまで丁寧に仕上げていかないと…と自覚が芽生えたように思います。

--それでも続けてこられたのはなぜですか。
石田  辞めたいと思ったこともありましたが、母が厳しかったので。母はヴァイオリンを弾いていたのですが、道半ばで辞めてしまったことを後悔していたので、僕にはどうしても続けさせたかったようです。それで仕方なく練習させられるのですが、その結果、本番でうまく弾けたときの充実感は最高で、言葉では言い表せないほど。クセになりそうなくらい気分が良かったです。

--一度そういう充実感を経験されると、病みつきになるんでしょうね。お母さまからも本番後には声をかけられましたか。
石田  それは出来によります。嘘をつくような人ではないので、頑張ったことに対して褒めるのではなく、良かったら良い、悪かったら悪いと、あくまでも結果に対する評価を言ってくれました。

--そういう厳しい目で見てくれる方が身近にいたからこそ、今の石田さんがあるのですね。まさに今ピアノを習っている子どもたちも多いと思いますが、彼らにどんなメッセージを贈りたいですか。
石田  小さい頃によく「場数を踏みなさい」と言われましたが、場数を踏むのが良いというより、楽しかった本番を重ねるのが良いと思うんですよね。毎回納得のいく演奏ができる訳ではないので、本番を重ねると嫌な思い出が募ってきてしまう場合もありますから。それが一番良くないと思います。

--本番で楽しく弾くには、どうすればよいのでしょうか。
石田  当たり前のことですが、やはり練習は大切です。練習をいっぱいすると自信もついて、人前で披露したくなります。この「誰かに聴いてもらいたい」という気持ちがとても大事で、披露の場は必ずしも発表会である必要はないんです。むしろ家族とか友人とか、聴いてもらいたい人に聴いてもらう方がいいかもしれない。とは言え、僕自身、弾きたくてたまらなくて自らすすんで練習するような子ではありませんでした。でも強制された練習でも、全く弾かないよりは身になりますから。そのうち「弾きたくて弾く」という自然な気持ちが生まれてくるはずです。

<つづく>

【インタビュー】ピアノ 石田啓明さん 第1回 オーケストラと共に音楽を作りたい

8月某日、ピアノの石田啓明さんが江戸川区総合文化センターに来館されました。
12月5日(土)のフレッシュ名曲コンサートで弾くことになる、大ホールのスタインウェイに触れ、本番のイメージを感じられた石田さんにお話を伺いました。その模様を、全3回にわたってお送りいたします。

オーケストラと共に音楽を作りたい

--本日、江戸川区総合文化センターのピアノを弾いてみて、印象はいかがでしたか。
石田啓明さん(以下、石田)  とても馬力があって、よく鳴る楽器だと思いました。しばらく使っていない楽器だと、弾き始めはモコモコした音の印象を受けることが多いのですが、それがなくて、高音もすごく響くし、ハンマーの状態も良かったのでしょうね。今回は特に、小林先生、日本フィルさんとのチャイコフスキーですから、オーケストラとの相性もぴったりだと思います。

--小林研一郎さん、日本フィルハーモニー交響楽団とは過去にも共演されていますね。今回再び共演することについてはいかがですか。
石田  小林先生とチャイコフスキーの組み合わせは、名前を聞いただけで重厚なイメージがあります。前回共演させていただいたとき、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」を聴いたのですが、とても熱い!演奏でした。今回のチャイコフスキーにも相当なこだわりをお持ちだと思うので、自分の考えというよりも、小林先生のイメージに浸って弾いてみれば、きっとすごく面白くて、お客様にも喜んで頂けると思います。

--今回演奏されるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番について、初めてステージで演奏されたのはいつ頃ですか。
石田  2年前の2013年10月です。翌年2014年の日本音楽コンクールに出場する際の課題曲の1つで、ピアノの先生の勧めもあって取り組み始めたのがきっかけです。

--過去に3回演奏されていますが、この曲を実際に弾いてみていかがでしたか。
石田  壮大な曲なので練習はかなりハードですし、手への負担も少なくないのですが、弾けば弾くほど、曲の根底にあるロシアの息吹をより身近に感じられるようなりました。ロシア音楽の壮大な世界を表現するには、テクニックも歌い方も独特のものが求められ、大きな壁を感じますが、それを超えたいと日々曲に向き合っています。本当に、弾くたびに新たな発見があり、課題が尽きることはありません。だからこそ、これから何十年とかけて理解していきたいと思っています。

--通常、オーケストラとは実質1回しかリハーサルができないそうですが、そのことについてどう思われますか。
石田  高校生のときは、例えば室内楽だったら、何回も合わせた上で本番を迎えていました。有り難いことに、東京音楽コンクールで1位を頂いたのをきっかけに協奏曲の演奏機会も増えたのですが、そのつどオーケストラとのリハーサルが1回しかできないと言うのは本当に大変です。ただ、プロとして活動していくための自覚を持つきっかけになりました。

--同じ曲でも指揮者によって解釈は様々ですが、実際にイメージと違ったことはありますか。
石田  はい、もちろんあります。オーケストラと共演するようになった最初の頃は、指揮者やオーケストラと呼吸を合わせるのが大変でしたが、最近は指揮者が求めることを徐々に汲み取れるようにもなってきました。

--「フレッシュ名曲コンサート」を通じて、オーケストラとの共演機会も増えて、ご自身の中でステップアップしていることを感じられますか。
石田  そうですね。「フレッシュ名曲コンサート」にはとても感謝しています。初めの頃はとにかく、弾くことや合わせることだけで精一杯でしたが、最近はオーケストラの方一人ひとりの音にまで意識が行き渡るようになってきました。共演を重ねるごとに、もっと一緒に弾きたい、共に音楽を作りたいという意欲も高まっています。

<つづく>

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