えどぶんインタビュー Vol.3
タワーホール船堀事業担当 江澤みゆきさん
ハーモニカ奏者 寺澤ひろみさん
えどがわ文化コンシェルジュ
毎回、江戸川区で活躍する人を紹介する「えどぶんインタビュー」。
第3回目は、2021年3月20日(土・祝)にタワーホール船堀で開催される「Anniversaire(アニヴェルセル)~ハーモニカコンサート~」の公演企画を担当している江澤みゆきさんと出演者であるハーモニカ奏者の寺澤ひろみさんに公演を中心にお話を伺いました。
江澤さんは、タワーホール船堀で公演企画を担当されるようになってから7年目で、寺澤さんは、江戸川区出身の世界で活躍する演奏家です。お二人の出会いは10年前、タワーホール船堀で開催された公演がきっかけでした。
そんなお二人が手掛ける今回の公演とは?また思いとは?
「公演を楽しみにしている皆様へ素敵な時間を贈りたい」
江澤さん:令和2年度は、予定していた主催公演が新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、全て中止となってしまいました。コロナ禍ではありますが、感染防止対策を講じた上で、演奏家の方の支援とともに公演を楽しみにしている皆様へ素敵な時間をお贈りすることが出来ればと思い企画したものです。
寺澤さんとは、平成23年に当館にてコンサートを開いていただいて以来のお付き合いで、平成26年の主催公演を経て、今回が3回目となります。
これまでに、寺澤さんのハーモニカを中心にピアノや弦楽四重奏、お箏、琵琶など、様々な楽器とのコラボレーションで素晴らしい演奏をしていただきました。また、ハーモニカを4台重ねて演奏されることもあり、さすが、世界大会で優勝された技術の高さを実感しています。今回も素晴らしい演奏を披露してくださると、確信していますし、寺澤さんは江戸川区のご出身なので、ぜひ、区民の方に寺澤さんのハーモニカの音色をお届けできればと思っています。
タワーホール船堀勤務
管理事務所 自主事業に従事
「ハーモニカのオリジナル曲の世界初演」
寺澤さん:江澤さんはアーティストをいかに輝かせるかということに心を砕いてくださる方で、心から信頼しています。また、タワーホール船堀は演奏家として活動を始めた頃に公演をさせていただいたことのある、ご縁の深い施設です。
今回の公演は、皆様にハーモニカの音色の素晴らしさを届けるとともに、プロ生活20周年の記念コンサートでもあります。今までを振り返りながら、新しいことに挑戦したいと思い、作曲家の西澤健一さんに委嘱したハーモニカのオリジナル曲を2曲初演いたします。
複音ハーモニカのための曲「蔦の門」とクロマティックハーモニカのための曲「ハーモニカとピアノのための小ソナタ」です。この複音ハーモニカとクロマティックハーモニカは似て非なるもので、例えるならヴァイオリンとヴィオラのようなものです。2つのハーモニカのオリジナル曲を同一奏者が行うのは、恐らく日本では私が初めてだと思います。作曲をお願いした西澤さんは歴史的仮名遣いを歌曲に取り入れるなど、文学的な作品作りをされる方で、私の好きな複音ハーモニカの世界感、空気感と共通点を感じています。
今回の作品はとても美しい響きの現代音楽に仕上りました。"ハーモニカと言えばこの曲"と言っていただけるように、大事にしていきたい作品です。
「ソーシャルディスタンスを演出に取り入れて」
寺澤さん:プログラムの中でハーモニカのアンサンブルも披露したいと思っていました。コロナ禍では、舞台上でも感染防止対策を講じる必要があります。そこで、ソーシャルディスタンスを生かした演出を考えました。
公演のチラシのデザインをお願いした境界剪画作家の杵淵三朗さんの繊細かつ大胆な作品と照明、映像のコラボレーションが舞台を彩ります。
どんなステージになるのかは観てのお楽しみ、コロナ禍だからこそ形にできたステージをぜひ、ご覧ください。
ハーモニカ奏者
東京都江戸川区出身 明治大学文学部卒
クロマティックハーモニカを竹内直子氏に師事
父の急逝をきっかけに独学で複音ハーモニカを習得
日本ハーモニカ芸術協会師範
全日本ハーモニカ連盟理事
コンサートのタイトルにある「Anniversaire(アニヴェルセル)」は、フランス語で"記念日"。
プロの演奏家として活動を始めて20周年になる寺澤さんですが、ハーモニカ奏者になる契機と
その魅力について聞いてみました。
寺澤さん:父がハーモニカ奏者でしたので、幼い頃からハーモニカの音色に囲まれて育ちました。ハーモニカ奏者になれと言われたことはありませんが、高校3年生で進路を決める頃、江戸川区総合文化センターで行われた「明治大学ハーモニカソサエティー」の定期演奏会を聴いたのがご縁で同大学に進学、ハーモニカを主体にしたサークルに入部したことも契機の1つと言えるかもしれません。ですが、大学3年生の2月に父が亡くなり、納骨が終わった後、父の部屋の棚にあったハーモニカと目が合い、1曲だけのつもりで始めたはずの複音ハーモニカで、その年の10月にドイツで行われた「ワールドハーモニカフェスティバル2001年」で優勝。就職と演奏の二足の草鞋は履けないとハーモニカ奏者の道に進むことを決めました。
父からハーモニカのレッスンを受けたことはありませんが、目と耳に残る父の演奏、舞台での振る舞いが常に模範であり基準です。今の私があるのは父の演奏を聴いていたおかげですし、日常で父が聴いていた音楽、何気なく話してくれた音楽の話、それらのすべてが教えとして私の中に息づき、現在の演奏家人生を支えてくれています。
「ハーモニカは歌よりも歌える楽器」
寺澤さん:現在、ハーモニカは大きく分けて3つの種類が主流で使われています。半音階を奏でるクロマティックハーモニカ、ブルースカントリー系の曲に使われるブルースハープと呼ばれる、吹く穴が10個の小型のハーモニカ、そして、複数の音を同時に鳴らすことができる複音ハーモニカです。
ハーモニカの魅力は第一にその音色で、特に複音ハーモニカは楽器の構造上、微妙にビブラートがかかり郷愁を誘う音色が特徴です。また、世界でもめずらしく「吸っても音が出る」楽器のため、吹いた時と吸った時に出る微妙な音の加減で感情を表現することができる「歌よりも歌える楽器」だと私は思っています。ハーモニカは簡単なようでとても奥深い楽器です。
ぜひ、多くの方に楽しんでいただきたいと思っています。
世界的ハーモニカの巨匠、佐藤秀廊考案のモデルで父親から譲り受けた40年前に作られたもの。
現在、寺澤さんが使用されているハーモニカの9割が父親のもの。
ハーモニカ奏者としてのスタートは成り行きのようなものだったと話される寺澤さんですが、 そこには才能と並々ならぬ努力、そしてハーモニカへの愛を感じます。
今回のように素敵な出演者を招いて公演を企画されている江澤さんは、企画をされる時にどんなことを大切にしているのでしょうか。
「楽しいひとときを感じていただきたい」
江澤さん:事業企画は毎年コンセプトを決めて内容の選定をしています。
企画の際に心掛けていることは、伝統・クラシック・ポップスなど、ジャンルを問わず新しい分野も取り入れながら、ご来場くださるお客様が楽しいひとときを過ごしていただけること、感じていただけることを第一に考えています。また、今回の公演のように、江戸川区出身やゆかりのある方を積極的に誘致し、皆様にご紹介していきたいと考えています。
タワーホール船堀では、どなたでも無料で観望できる展望塔があり103mの展望室からは360°のパノラマをお楽しみいただけます。また、令和3年度の主催公演は、5月22日(土)開催予定の「神田伯山独演会」が最初となり、その後もクラッシックポップスなど、人気の公演が目白押しです。
最後にお二人に、江戸川の魅力・おすすめスポットについて聞いてみました。
江澤さん:江戸川区には金魚の養殖や小松菜の栽培という特徴の他に、様々な伝統工芸を受け継いでいる方がいらっしゃいます。
江戸扇子・江戸表具・江戸風鈴など、素晴らしい工芸品の製作をされていて国内外でご活躍されています。
寺澤さん:季節がよいと区内にいくつかある親水公園沿いを散歩することがあります。
時には子ガモちゃんの可愛らしい姿を見ることができ、心の潤いになります。
また、特に夜ですが首都高速湾岸線を西方面から戻ってくる時に、花と緑の観覧車のライトアップが見えると、帰ってきたなと感じます。
喜ばれる公演を届けたい江澤さんとハーモニカという楽器の魅力を伝える活動を続けている寺澤さん、二人の思いが詰まった公演がとても楽しみです!
〇タワーホール船堀ホームページ
https://www.towerhall.jp/
〇寺澤ひろみさん公式ホームページ
http://www.terasawahiromi.com/